身近な古墳シリーズ① 身近な古墳
役所に書類を提出しに行った。
ところが、目的地に到着してから、肝心の書類を忘れてしまったことに気づいた。
用事は明日以降済ませることにして、なんとなくスマホの地図を見ると、近くの公園に横穴古墳群があることを知った。
ちょっとした空き地の隣に古墳群があるような公園で、住宅街にあるにもかかわらず人気が無い。人気があったところで入りづらいからこれでいいと思った。
こういった説明があって、詳しくなくても勉強になる。
奥へ進むと、見えてきた。
夕方なのもあってか妙な雰囲気に圧倒される。お墓と聞いて行ったからには、そういう心持になる。
説明によれば、内部は少し高くなっているようだ。中に入って見てもいいらしいが、とにかく虫がたくさんいる中で暗い所に入っていくのは気が引けたので、外から見るだけにとどめた。
窓がついているものもあった。ハンドルを回して、ワイパーで内側の水滴を拭いてから見るタイプ。ということは、内部はそこそこ暖かいんだろうか。
なんだかホラー映画のびっくりギミックみたいだと思った。ちなみに、暗くて何も見えなかった。
こうして入れなくなっているお墓もあった。崩落などで危険な状態にあるためとのこと。
まさか住宅街の真ん中で、古墳時代の遺跡を見ることができるとは思わなかった。この横穴墓は、農民の家族を埋葬するためのものだそうだ。このお墓をつくった人たちも、眠っている人たちも、まさか周りに住宅街ができて、たくさんの人が住むようになっているとも思っていないだろう。
千年後、人々は死とどう向き合っているだろう。既に克服しているかもしれないし、もっと良い向き合い方を見つけているかもしれない。そうして、人工的な石碑が規則的に並ぶ現代日本の墓地を、千年後の人々はどう捉えるのだろうか。
帰り道、小学校の脇を通ったら、手を振る女の子に「おーい!」と声をかけられた。妹かな、と思って手を振り返そうとしたが、妹は中学校に上がったことを思い出してやめた。
おわり。